若手インハウスのひとりごと

若手企業内弁護士の日々の仕事、勉強、法律のこと、今後のキャリアや業界のことを思うままに記すブログです。

組織内弁護士のキャリアパスその2

組織内弁護士のキャリアパスその2を

書きたいと思います。

 

② 法律事務所→インハウス

これも最近多いですよね。

キャリアチェンジする理由はいくつかあります。

 

ア 一般民事・刑事の市場規模が徐々にシュリンクしていく中で、けど、クライアントへのストレスはあんまり変わんない中で、もっと安定的な仕事ってあるんじゃないかっていう線。

 

イ がっつり企業法務やってる中で、もっとビジネスの人らと一緒にプロダクトを作っていく方が楽しそうだし、第一、このまま事務所の兵隊でいても未来なんてあるのか?っていう線。

 

ウ もともと弁護士にこだわりがなくて(法律は好きだけど)、自分もビジネスをやっていきたいという線。

 

もっと他にもあるでしょうが、ざっくり言えば上記のような理由なんじゃなかろうかと推察します。

 

ちなみに、昨日の日経夕刊に載っていた「弁護士、企業で武者修行」という記事、本職の社内弁護士からすると、「はぁあ??」という印象です。

www.nikkei.com

そもそも出向というインフラが用意されているわけですね。つまり、出向先という人脈を切り開いたのは彼ら自身ではないし、たかだか1〜2年、しかも出向者という立場で、帰ったら身分が保証されている人たちのどこが「武者修業」なんでしょう。

とりあえず、ビジネスに興味あります風な、この業界のことを知っています体の、有益なアドバイスできます!という役作りが大半です。

実際、大して具体的なアドバイスできないと思いますね。現場の人らと飲みに行ったこともない人が大半でしょうし、所詮、別の船に乗っている人らなわけなので。したがって、こういう人たちは今回の検討からは除きます。日経の記事ってこういうところあります。ジャーナリストをうたうのであれば、ちゃんと「現場」の人にヒアリングしましょう笑

 

では、本論に。

 

「先生と一担当の壁」

多分、法律事務所からのインハウスで一番戸惑うのが、コミュニケーションだと思います。事務所だと、難解な言葉やディティールに寄った話をしていれば、なんとなく誤魔化せることってあるんですよね。

しかし、それは現場の人には通用しません。もっと具体的で、レベル感を下げた議論じゃないと分からないんですよ。法律事務所のノリで、現場の人と会話した途端に、現場の人の頭の中には????マークがつきます。今までは、先生で誤魔化せていた部分が、通用しなくなるという壁です。

 

「肌感覚と意思決定」

また、社外弁護士には、会社の中にいるからこその肌感覚みたいなものが分からない。あのときのあの案件、この人のあの一言で、決まったんだよね/潰されたんだよねという背景事情です。どんだけ正しい意見でも、それって時と場合によっては通用しないよね。という歴史観とも言えます。

加えて、現場の人は、その意見が正しいかどうかよりも、誰が何をいったかということを重視します。つまり、関係値ができていなければ、どんなにいい意見でも採用されないということを自覚する必要があります。

こんなことは会社員としては序の口ですよね。

その波風の現場に立たされてこそ、初めて社内弁護士としての力量が試されます。そこを乗り越えるにはけっこうな時間がかかるんですよ。。

これを1、2年で押さえるのって本当にすごい人でないと無理です。なので、法律事務所→インハウスを考える人は、少なくとも2年はその会社で、下積みをすることを覚悟しないといけないのではないかと思います。

 

「争訟を踏まえたアドバイス

社外弁護士→インハウスのハードルって簡単なようでいて、けっこうそれなりにあるんです(まあ大したハードルではないんですが)。逆にいうと、上記の感覚の違いを乗り越えさえすれば、めちゃくちゃ伸びしろあるんじゃないかなと思います。やはり、「争い」という、ある意味、究極の肌感覚を知っているわけだから、アドバイスも、そこを睨んだ深みのあるものになりそうです。ただ、これは現場の事情をしっかりと踏まえていないと、かなりの確率で、ポカーン??な状況が生まれるリスクも孕んでいます。

 

「結論」

社内であれ、社外であれ、弁護士の仕事は事実関係を精確に押さえる!ということが肝です。

訴訟を知っているかどうかよりも、事実関係をどれだけ把握しているのか?そして、その事実に対する自分の評価がどれだけ的を得ているかという部分がやはり大事なわけですね。

その業界特有の「慣習法」をどれだけ自分の血肉にできるかどうか、それが「法律事務所→インハウス」の最終的な決め手になりそうです。

したがって、それくらいの「意気込み」というか「覚悟」のある社外弁護士であれば、かなりの確率で、インハウスとしても成功しそうです。いわゆる外様で、なんとなくビジネスを知りたくて出向している弁護士よりかは何倍も頼りになるでしょう。

 

次回は、最後、「組織内弁護士のキャリアパスその3」です。