若手インハウスのひとりごと

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日経記事:「個人データ乱用、独禁法で改善命令 公取委が指針案」について

さて、本日夕刻、日経から以下の報道がありました。

www.nikkei.com

 

なんでも、公取が、個人データの乱用について「優越的地位の濫用」(独禁法19条)を適用する際の指針(ガイドライン)なるものを検討していることが判明したとのこと。

個人的にはかなり衝撃です(大丈夫かなこれは、、)。

来年の個人情報保護法の改正では、Cookieや位置情報などのパーソナルデータについては、「個人情報」として規定することは見送り、かつ、これらのデータをターゲティング広告へ活用することについても事前同意を取ることまでは求められない、つまり、個人情報保護委員会は、これらのアドテクのエコシステムを支える技術について、メスを入れないと考えていたのですが、まさかの独禁法、しかも公取からのアプローチ。

公取のこの方向性について、個人情報保護委員会は了解していたのですかね、、

見方によっては、完全に面子をつぶされたように見受けられます。

縦割りで、省庁間のパワーゲームの中では、新参者の個人情報保護委員会の力は大したことない。天下の公取からしたら、こら個情委!何をもたもたしているんだ!!俺らは先にやるからな!!というメッセージとも受け止められかねないアプローチです。

 

気になるのは、そもそも「プラットフォーマー対一般消費者」の関係に「優越的地位」を読み込む事ができるのかという点も然りですが、何よりも、以下の報道にあるように、

サイトでの購買履歴や位置情報を含め、個人データを同意なく利用すると独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたると示す。不適切な場合は改善命令を出し、支配力を高めるIT大手から個人を守る仕組みをめざす。 

ここで求められる「同意」のレベルです。

つまり、GDPRで求められるように、明示的な同意を記録しなければアウト!!という温度感なのか、あるいは、いわゆるオプトアウトの機会を与えていれば足りるのかという点です。

グローバルな拠点を持つ会社を除けば、「GDPR対応ね、、いつかやんないとねーわかってるんだけどねー」とノンビリしていたというのが多くの日本企業の実情だと思います。しかし、一気に海外の法律の話から、日本法の話になってしまったというか。しかも、相手は弱腰の個情委ではなく、あの天下の公取です。

まだ、公取からオフィシャルなリリースはありませんが、今後、この方向性が進めば、個人情報保護委員会の存在感ってますます薄くなるように思います。

どのようにして彼ら彼女らが、この議論を巻き返すのかは見所ですし、パーソナルデータを含む個人情報を規律する法律を所管・執行する省庁としては、まともな意見を提示してもらいたいものです。所詮、個人情報保護法独禁法に溶けて包摂されるものに過ぎないのか、いやそうではないのか?

今後の議論の進展に注目したいと思います。