若手インハウスのひとりごと

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PayPayキャッシュバックの景表法上の整理その1

ペイペイのキャッシュバックキャンペーンですが、早くも12月の中旬には終了してしまいました。キャッシュバック欲しさに ペイペイに登録をしてお買い物をされた方も多いのではないかと思います。

 

さて、このようなキャッシュバックキャンペーンやポイント還元キャンペーンをやる際に問題になるのが、景品表示法の景品規制です。

 

「景品規制の趣旨」

ざっくりいうと、景品規制とは、あまりに高額な商品やポイント還元などをやり過ぎてはいけませんよ!というルールです。

その理由は二つあります。まずは、①消費者の保護、次に、②市場の保護という観点です。

まず、①ですが、あまりに高額な景品の提供をOKにしてしまうと、それに釣られて取引の内容や品質をよくよく考えることなしに購入してしまい、損をする人が出てきてしまいます。だから、高額な景品は出してはいけませんよ!ということです。

次に、②ですが、あまりに高額な商品、ポイントでユーザーをかき集めることをOKにしてしまうと、結局、お金を持っている企業に人が流れてしまい、結果的にサービスの内容や品質の勝負ではなく、景品がどれだけお得かという競争になり、モノやサービスの品質競争が働かなってしまいます。結果、お金を持っている会社が勝ち、それよりも本当は優れたサービスを提供している会社が勝てなくなってしまいます。つまり、業界のイノベーション自体が止まってしまうということです。体力の少ない企業だからこそ、サービスの内容や品質、そしてアイデアにこだわって、大きな企業と戦えるようにしておかないと、業界全体の革新が進まなくなってしまいますよね。

 

「景品規制の概要」

 上記の趣旨から、景品規制は以下のような構造になっています。

① 「景品類」に該当する場合は景品提供のパターンごとに制限がかかる

② 一般懸賞パターンの場合の規制

③ 共同懸賞パターンの場合の規制

④ 総付景品パターンの場合の規制

それでは、個別に見ていきましょう。

 

① 「景品類」に該当する場合は景品提供のパターンごとに制限がかかる

 

景品類に当たるかどうかは、以下の3要素により判断され、3要素全部を満たす必要があります。

 

→ 顧客誘引の手段かどうか

ざっくりいうと、「景品」をあげる目的がユーザーを獲得することにあるかどうかです。

たとえば、ユーザー登録してくれたら、ポイントを2倍あげるというキャンペーンなどです。逆に、ゴミ掃除のボランティアに参加してくれた謝礼として、QUOカードをあげたとしても、それは顧客誘引の手段とはいえないですよね。

 

→ 取引に付随して提供するものかどうか

ざっくりいうと、その事業者と取引をしないと、その景品がもらえないかどうかです。

たとえば、ポイントをもらうためには、必ずこの店舗でモノを買わないといけない場合です。逆に、その店舗でモノを買わなくてもプレゼントがもらえる場合は、取引に付随しているとは言えない可能性が高いです。

 

→ 経済上の利益に当たるものかどうか

ざっくりいうと、もらえる「景品」がお金になるかどうかです。

たとえば、非売品のグッズのように市場で値段がついていないものでも、メルカリなどのフリマサービスに出品すれば売れるような場合、経済上の利益に当たることになります。逆に、フリマサービスに出品しても、価がつかないような場合は、それを経済上の利益とは言うのは難しいことになります。

 

② 一般懸賞パターン

ざっくりいうと、ある会社の商品を買ったお客さん限定で、くじ引きや、クイズなどを行って、商品券などをプレゼントするような場合です。この場合、③の共同懸賞とは違って、プレゼントを用意するコストを一つの会社で負担しているのが特徴です。逆に、複数社でそのコストを分担するような場合は、③の共同懸賞パターンになります。一般懸賞にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額が5,000円未満の場合

    取引価額の20倍が上限

→5,000円以上の場合

    10万円が上限

そのキャンペーンで配る景品の総額がキャンペーンの売上総額(予定)の2%以内であることが求められます。

 

③ 共同懸賞パターン

ざっくりいうと、商店街の協賛で、加盟店で商品を買ったお客さん限定に、くじ引きや、クイズなどを行って、商品券をプレゼントするような場合です。この場合、一般懸賞と違って、プレゼントを用意するコストを複数社で負担しているのが特徴です。

共同懸賞にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額に関わらず、一律30万円まで。

そのキャンペーンで配る景品の総額がキャンペーンの売上総額(予定)の3%以内であることが求められます。

 

④ 総付景品パターン

ざっくりいうと、その商品を買ってくれたお客さんのうち、5000円以上の買い物をしたお客さんに対しては全員QUOカードをプレゼントするような場合です。5,000円以上の買い物をしても全員がプレゼントをもらえるわけではない場合は、上記の懸賞に分類されます。

総付景品にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額が1,000円未満の場合

    200円まで

→取引価額が1,000円以上の場合

    取引価額の10分の2まで

※ いわゆるオープン懸賞は②、③、④のどれにも当たりません。オープン懸賞とは、取引の成立や一定の取引を誘引させるマイルストンプ(来店)が、プレゼントを配布する条件になっていないということです。この場合、オープン懸賞で提供されるプレゼントは、そもそも「景品」ではないという整理になります。ですので、オープン懸賞で配布できるプレゼントに金額の制限はありません。

※ 上記②、③、④の規制よりもさらに厳しい業界ごとの特別ルールがあるので、キャンペーンを行う取引がどのような取引なのかには注意する必要があります。

 

もっと詳細を知りたいという方は、以下の消費者庁のページにさまざまな資料があり、そちらをご覧ください。

景品規制の概要|消費者庁

 

「ペイペイの場合はどのように考えるのか」

さて、ではペイペイの場合はどのようなロジックで、100億円ものお金をキャンペーンに投じることができたのかということを整理していきたいと思います。この点については、次回の記事「ペイペイ20%キャッシュバックCPの景表法上の整理その2」で書きたいと思います。

 

2018年も今日で終わりますね。

今年やり残したこと、来年やりたいこと、いろいろな思いがよぎるところではありますが、一歩でも前に進んでいければと思います。