若手インハウスのひとりごと

若手企業内弁護士の日々の仕事、勉強、法律のこと、今後のキャリアや業界のことを思うままに記すブログです。

PayPayキャッシュバックの景表法上の整理その2

明けましておめでとうございます。

ついに、新年が始まってしまいましたね。

 

さて、ペイペイのキャッシュバックCPの景表法上の整理その2です。

前回の記事では、景品規制の概要を書きました。

wakateinhouse.hatenablog.com

 

今回は、それを以下のCPにあてはめた場合にどのような整理がされるのかを考えてみたいと思います。

 

【ペイペイキャッシュバックCPの概要】

まず、今回のペイペイキャッシュバックの概要について見ていきたいと思います。個人的には、20%残高キャッシュバックばかりがクローズアップされた観がありますが、全部で以下の4つのキャンペーンからなっています。

 

「キャンペーン①」

PayPay決済利用毎に20%戻ってくるキャンペーン

→ ペイペイ加盟店において、ペイペイ決済を利用して商品を購入した人全員に購入金額の20%をキャッシュバックするキャンペーンです。

*キャンペーンの主催者はPayPay株式会社の1社です。

 

「キャンペーン②」

PayPay決済利用毎に抽選にて40回に1回の確率で全額(10万円相当まで)戻ってくるキャンペーン

→ペイペイ加盟店において、ペイペイ決済を利用して商品を購入した人のうち、40分の1の確率で全額(10万円相当まで)をキャッシュバックするキャンペーンです。

*キャンペーンの主催者はPayPay株式会社の1社です。

 

「キャンペーン③」

Yahoo!プレミアム会員ならPayPay決済利用毎に抽選にて20回に1回の確率で全額(10万円相当まで)戻ってくるキャンペーン

→ペイペイ加盟店において、ペイペイ決済を利用して商品を購入した人がYahoo!プレミアム会員である場合は、20分の1の確率で全額(10万円相当まで)をキャッシュバックするキャンペーンです。

*キャンペーンの主催者は、ヤフー株式会社とPayPay株式会社の2社です。

 

「キャンペーン④」

ソフトバンクまたはワイモバイルユーザーならPayPay決済利用毎に抽選にて10回に1回の確率で全額(10万円相当まで)戻ってくるキャンペーン

→ペイペイ加盟店において、ペイペイ決済を利用して商品を購入した人がソフトバンクまたはワイモバイルユーザーである場合は、10分の1の確率で全額(10万円相当まで)をキャッシュバックするキャンペーンです。

*キャンペーンの主催者は、ソフトバンク株式会社、PayPay株式会社の2社です。

 

各CPの細かい条件や詳細は以下に詳しいです。

やはり、100億円もの大金を投じたキャンペーンだけあって、

誤解のないように、細やかに詳細を説明しています(この辺りのリーガルマターはYahooの法務の方が対応したんでしょうね)。

 

paypay.ne.jp

 

【各キャンペーンの整理】

「キャンペーン①」

まず、キャッシュバックの20%が、景表法上の「景品等」に該当するかどうかですが、キャッシュバックされたペイペイ残高は、ペイペイ決済を利用しないともらうことができないので、キャッシュバックは、顧客誘引の手段として使われています。

また、ペイペイ決済の利用を条件としているため、取引付随性も認められるでしょう。

さらに、キャッシュバックされたペイペイ残高を使えば、ペイペイ加盟店で買い物ができるため、キャッシュバックが経済上の利益であることにも疑いはないと思います。よって、三要素を満たすので「景品等」とみることができます。

加えて、ペイペイ加盟店でペイペイ決済を使って、商品を購入すれば全員にキャッシュバックがあるので、「総付景品」と整理して問題ないかと思います。

実際に、PayPay側の説明を見ても、キャンペーン詳細の説明の中で、自ら「景品」と表現しているため、PayPayとしても、キャンペーン①を総付景品と考えていたことが理解できます。

したがって、キャンペーン①は、総付景品として、取引価額の10分の2の範囲で行う必要があり、購入金額の20%キャッシュバックは、この範囲内であることは明らかです。

 もっとも、20%のキャッシュバックは総付景品ではなく、「値引き」という整理もできたのではないかと思います。PayPayとしては、なぜこのような整理をしなかったのでしょうか。

仮に値引きという整理ができれば、景品規制の上限に服することはないので(正常な商慣習という限定はかかりますが)、もっと尖ったキャンペーンが打てたのではないか。なぜPayPayはそのような整理をしなかったのかを勝手に想像してみたいと思います。

* 値引き構成

ここで、景表法における値引き構成とは何かということについて説明します。

これから行うキャンペーンが、「顧客誘引目的」、「取引付随性」、「経済上の利益」の三要件を満たし、「景品等」にいったんは当てはまるとしても、「正常な商慣習に照らして値引きと認められるもの」については、最終的に「景品等」とは考えず、したがって、景品規制に服さないというルールです。

法律と告示と行政規則が入り混じって成り立っているルールですが、以下の建付けから成り立っています。

① 内閣総理大臣に「景品」内容の指定を委任(景表法2条3項)

「この法律で「景品類」とは、(略(三要件))であつて、内閣総理大臣が指定するもの をいう。」

② ①の委任に基づき以下の告示(H21.08.28公正取引委員会告示13号)

「ただし,正常な商慣習に照らして値引(略)と認められる経済上の利益は、含まない。 」

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_6.pdf

③ ②の告示の運用基準を示す(H26.12.01消費者庁長官決定)

「『値引と認められる経済上の利益』に当たるか否かについては、当該取引の内容、その 経済上の利益の内容及び提供の方法等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。」

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_20.pdf

 

なぜ、景品に該当するとしても、OKとされているかという理由について説明します。すなわち、商品の値引きとは、商品の金額を下げることなので、その結果として自社商品の「価格」そのもので勝負するということです。つまり、価格はサービスの要素そのものになるため、単なる景品ではなく、低価格というコンテンツで勝負しているといえるので、景表法の「市場保護」、「消費者保護」の趣旨が機能しづらい状況になるのですね。

要は、価格を下げるための経営努力をしているんだから、金の力だけでお客さんを掴んだわけじゃないのです!お客さんはその価格に魅力を感じたんだから、安かろう悪かろうであれども、それはお客さんの判断なのです!という理屈が立ちやすいということです。したがって、景表法上、この「値引き」については景品規制に服さないものとされています。

 

* なぜ値引き構成を取らなかったのか。 

上記のように、値引き構成を採れば、景品規制(景品の上限規制)に服することはなくなります。しかし、なぜPayPayはこれを採用しなかったのか。

この点について、次回記事を書いていきたいと思います(遅筆ですみません)。

 

 

 

 

PayPayキャッシュバックの景表法上の整理その1

ペイペイのキャッシュバックキャンペーンですが、早くも12月の中旬には終了してしまいました。キャッシュバック欲しさに ペイペイに登録をしてお買い物をされた方も多いのではないかと思います。

 

さて、このようなキャッシュバックキャンペーンやポイント還元キャンペーンをやる際に問題になるのが、景品表示法の景品規制です。

 

「景品規制の趣旨」

ざっくりいうと、景品規制とは、あまりに高額な商品やポイント還元などをやり過ぎてはいけませんよ!というルールです。

その理由は二つあります。まずは、①消費者の保護、次に、②市場の保護という観点です。

まず、①ですが、あまりに高額な景品の提供をOKにしてしまうと、それに釣られて取引の内容や品質をよくよく考えることなしに購入してしまい、損をする人が出てきてしまいます。だから、高額な景品は出してはいけませんよ!ということです。

次に、②ですが、あまりに高額な商品、ポイントでユーザーをかき集めることをOKにしてしまうと、結局、お金を持っている企業に人が流れてしまい、結果的にサービスの内容や品質の勝負ではなく、景品がどれだけお得かという競争になり、モノやサービスの品質競争が働かなってしまいます。結果、お金を持っている会社が勝ち、それよりも本当は優れたサービスを提供している会社が勝てなくなってしまいます。つまり、業界のイノベーション自体が止まってしまうということです。体力の少ない企業だからこそ、サービスの内容や品質、そしてアイデアにこだわって、大きな企業と戦えるようにしておかないと、業界全体の革新が進まなくなってしまいますよね。

 

「景品規制の概要」

 上記の趣旨から、景品規制は以下のような構造になっています。

① 「景品類」に該当する場合は景品提供のパターンごとに制限がかかる

② 一般懸賞パターンの場合の規制

③ 共同懸賞パターンの場合の規制

④ 総付景品パターンの場合の規制

それでは、個別に見ていきましょう。

 

① 「景品類」に該当する場合は景品提供のパターンごとに制限がかかる

 

景品類に当たるかどうかは、以下の3要素により判断され、3要素全部を満たす必要があります。

 

→ 顧客誘引の手段かどうか

ざっくりいうと、「景品」をあげる目的がユーザーを獲得することにあるかどうかです。

たとえば、ユーザー登録してくれたら、ポイントを2倍あげるというキャンペーンなどです。逆に、ゴミ掃除のボランティアに参加してくれた謝礼として、QUOカードをあげたとしても、それは顧客誘引の手段とはいえないですよね。

 

→ 取引に付随して提供するものかどうか

ざっくりいうと、その事業者と取引をしないと、その景品がもらえないかどうかです。

たとえば、ポイントをもらうためには、必ずこの店舗でモノを買わないといけない場合です。逆に、その店舗でモノを買わなくてもプレゼントがもらえる場合は、取引に付随しているとは言えない可能性が高いです。

 

→ 経済上の利益に当たるものかどうか

ざっくりいうと、もらえる「景品」がお金になるかどうかです。

たとえば、非売品のグッズのように市場で値段がついていないものでも、メルカリなどのフリマサービスに出品すれば売れるような場合、経済上の利益に当たることになります。逆に、フリマサービスに出品しても、価がつかないような場合は、それを経済上の利益とは言うのは難しいことになります。

 

② 一般懸賞パターン

ざっくりいうと、ある会社の商品を買ったお客さん限定で、くじ引きや、クイズなどを行って、商品券などをプレゼントするような場合です。この場合、③の共同懸賞とは違って、プレゼントを用意するコストを一つの会社で負担しているのが特徴です。逆に、複数社でそのコストを分担するような場合は、③の共同懸賞パターンになります。一般懸賞にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額が5,000円未満の場合

    取引価額の20倍が上限

→5,000円以上の場合

    10万円が上限

そのキャンペーンで配る景品の総額がキャンペーンの売上総額(予定)の2%以内であることが求められます。

 

③ 共同懸賞パターン

ざっくりいうと、商店街の協賛で、加盟店で商品を買ったお客さん限定に、くじ引きや、クイズなどを行って、商品券をプレゼントするような場合です。この場合、一般懸賞と違って、プレゼントを用意するコストを複数社で負担しているのが特徴です。

共同懸賞にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額に関わらず、一律30万円まで。

そのキャンペーンで配る景品の総額がキャンペーンの売上総額(予定)の3%以内であることが求められます。

 

④ 総付景品パターン

ざっくりいうと、その商品を買ってくれたお客さんのうち、5000円以上の買い物をしたお客さんに対しては全員QUOカードをプレゼントするような場合です。5,000円以上の買い物をしても全員がプレゼントをもらえるわけではない場合は、上記の懸賞に分類されます。

総付景品にあたる場合の景品の上限は以下のとおりです。

 

→取引価額が1,000円未満の場合

    200円まで

→取引価額が1,000円以上の場合

    取引価額の10分の2まで

※ いわゆるオープン懸賞は②、③、④のどれにも当たりません。オープン懸賞とは、取引の成立や一定の取引を誘引させるマイルストンプ(来店)が、プレゼントを配布する条件になっていないということです。この場合、オープン懸賞で提供されるプレゼントは、そもそも「景品」ではないという整理になります。ですので、オープン懸賞で配布できるプレゼントに金額の制限はありません。

※ 上記②、③、④の規制よりもさらに厳しい業界ごとの特別ルールがあるので、キャンペーンを行う取引がどのような取引なのかには注意する必要があります。

 

もっと詳細を知りたいという方は、以下の消費者庁のページにさまざまな資料があり、そちらをご覧ください。

景品規制の概要|消費者庁

 

「ペイペイの場合はどのように考えるのか」

さて、ではペイペイの場合はどのようなロジックで、100億円ものお金をキャンペーンに投じることができたのかということを整理していきたいと思います。この点については、次回の記事「ペイペイ20%キャッシュバックCPの景表法上の整理その2」で書きたいと思います。

 

2018年も今日で終わりますね。

今年やり残したこと、来年やりたいこと、いろいろな思いがよぎるところではありますが、一歩でも前に進んでいければと思います。

法務におけるリスクの見極め方

法務の仕事をしていると、事業部から今まで全くタッチしたことがない領域の相談を受けることがままあります。

この時のファーストインプレッション(事業部から見た)って結構大事だなと思います。

せっかく相談してくれたのだから、何かお土産を持っていってもらいたい。

自分を頼ってきてくれているのだから、この担当者に応えたい。

そういう思いから気がはやってしまうのですが、適当なことを言ってしまって空手形を切るわけにもいかない。

かと言って、全件持ち帰って検討させてもらいたいというのは、

せっかく顔を突き合わせてMTGしている意味がない。

こういうときって、少ない経験の中から引出しを漁ってみるのですが、大してマッチする材料がなかったりするんですよね。

知らないもの、経験したことがないものって、何がリスクで、何が大丈夫なのかということが把握しづらい。

だから、過剰に保守的なアドバイスをしてしまい、結果、事業部に本来不要な検討を強いることがあるのではないかと思います。

ただ、後から振り返ってみれば、全然大したことではなかったりもする。

かといって、慎重にならざるを得ない領域(独禁法、特許、各種業法など)もある。

この得体の知れないリスクや不安感とどう向き合えばいいのか、

そのことが原因で、本来取り得たはずのオプションを検討の遡上から外してしまい、

せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうことは避けなければなりません。

 

リスクを適切にサイジングし、事業部も(その上自分自身も)安心できるようなアドバイスをするにはどうすれば良いのか。

結論としては、前提となる事実、背景をできる限り多く手に入れる事だと思います。

そして、そのスキームを取ったときに起きうるネガティブな反応や事象を可能な限り想像してみることだと思います。具体的に考えていけばいくだけ、リスクの色や形が明らかになります。経験則に照らしてみて、そんなに大したことではないんじゃないかというぼんやりとした安心感のようなものも芽生えてきます(逆にこれはやばいというのも当然あります)。

 

例えば、会社のホームページを刷新するためのイメージ写真を制作会社に委託して作ってもらうとします。

金額は200万円くらいだとしましょう。

プロのカメラマンにお願いをし、恵比寿とか広尾とかでくつろいでそうなモデルさん達を5人くらい、プロダクションを通して用意してもらう。当社としては、当然、200万円ものお金をかけて、委託をし、お願いをしたんですから、写真の著作権はこちらに欲しいと思うわけです。あとあと使うかもしれないし。しかし、制作会社は、これを頑として拒否する。

「権利は御社には移転しません。著作物の使用許諾を弊社が与えているだけなんです。モデルの起用は、弊社が再委託したプロダクションがやっている。著作権とは別のプロダクションのパブリシティの問題もある。なので、権利が御社に移るという条件は呑めません。」

担当としては、著作権やその他の権利が全部取得できないことが何か法律的にやばいことなんじゃないかと考えます。そこで法務に相談に来る。

 

自社のコーポレートページ(いわば会社の顔)に使う宣材写真の著作権を当社が保有していないこと、そうであるにも関わらず、200万円というコストをかけていること。それはリスクと言えるか、リスクだとしてどのようなリスクか。このように、抽象的に考えると何だかよく分かりません。

 

しかし、具体的に考えてみると答えは簡単です。そもそも今のHPで使っている写真を今後も再使用する可能性があるのか。いつまで使う見込みなのか。平均するとどのくらいの期間使用するものなのか。また、外部に向けて再使用した事実があるのか。そして、子会社などの他社の案件に使わせたことはあるのか。まずはこれを確認します。

 

結果、再使用した事実は見聞きした事がない。2〜3年おきに刷新している。子会社は子会社のコーポレートイメージがあるので、当社のものをそのまま使うことはない。

という事実が分かります。そうすると、当社としては、何年かの間、HPの顔としてその写真を使用できる許可をもらえば足りるわけです。つまり、権利の所在にこだわらなくても、本来の目的を達成できることがわかりました。したがって、後は当社が企図した範囲、期間、利用方法でその宣材写真を使う事ができるのか、すなわち使用条件の問題に議論が定まります。そして、その使用条件に200万円を払うのが妥当なのかどうかという経済的な議論に収斂します。このようにして、この案件のリスクの本質が権利の所在ではなく、宣材写真の使用条件とそれに見合う価格というよりはっきりした形で認識する事ができるようになりました。また、本来の目的との関係で最低限必要なことは何なのかということを把握することができるようになりました。

 

このようにできる限り多くの事実を集め、具体的に想像してみることで、今やろうとしていることが持つリスクの実態が見えてきます。また、そのリスクとの関係でやるべきことと、やらなくてもよいことが見えてきます。当然、法務だけでは考える事が出来ない場合もたくさんあるので、そういうときは、遠慮することなく、現場の人の知恵も借りながら、具体的な局面をイメージし、そのイメージを現場の人と共有していくことで、得体の知れないリスクの正体を明らかにしていき、取るべきリスクと取るべきでないリスクを選別できるようになっていくのではないかと思います。

法務にとっても事業部にとっても、具体的な事実の把握や局面のイメージなしに、何となくのイメージだけで判断するという危険を回避することが可能となります。

 

というようなことをスムーズにできるようになりたいものです。

なかなかその場でやるとなると難しいのですがね笑。

法務における資格の有無その1

自分の中でPayPayネタが飽きてしまったので、

表題の件について一つ考えてみたいと思います。

 

法務におけるライセンスの有無について。

端的にいうと、資格の有無ってどう違うのかという点です。

インハウスが爆発的に増えたのは、ここ最近のことです。必然、自分の上長が弁護士資格を持っていないという会社も多いのではないかと思います。また、先輩の法務部員の中にも資格を持っていない人がいらっしゃるのではないかと思います。

資格の有無を取り上げることって、あまり意味のあることではないですが、きっと両者の違いってあるのか?ないのか?を知りたい人も多いのではないかと思います。だからこそ、あえて書いてみてもよいのかなと。

 

さて、非常にざっくりとですが、比較する際の視点としては以下のような能力に分解されるのではないでしょうか(あくまで主観です)。

 

1【人脈力=観察力】

2【想像力=表現力】

3【仕事力=総合力】

 

以下、詳述します。

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1【人脈力=観察力】

法務という、直接会社の利益に貢献しない部門は、他部署との関係値に大きく左右される性質を持っているため、社内人脈を持っているか、当社のビジネスをどれだけ分かっているかという点が非常に大事です。

たとえば、会社の中で仕事をしていると、この人はこういう性格だなあ、こういう動き方をする人だよなあという赤信号が灯る人や、AさんとBさんって、実は繋がっているらしいよ?という非公式な情報に遭遇しますよね。法務の仕事は、そのような局面でこそ意味をもつ仕事なので、背後にある社内事情(人間関係)が大事になるときがあります(これは組織の中にいる限り、どんな職種でも同じかもしれません)。

明文化されていない文脈って組織の中に確かにありますよね。

それを忖度というのかどうかは難しいところですが、そのような「感触」を、目の前の人間から観察する力って大事です。そこを踏まえずにモノを申しても同僚にも事業部にも一切伝わりません。

 そして、これらの情報にアクセスできるのは、基本的には、長く会社にいて、他部署の方との人間関係ができている人です。

割合的には、インハウスよりも、長年プロパーで働いている法務部員の方がこの辺りの情報にアクセスしやすいのではないでしょうか。インハウスは大体2〜3年のスパンで転職しがちですwそんな短い期間の中で、こういう大切な情報にアクセスできるようになるって難しいんじゃないかと思います。

その意味では、どれだけ当社のビジネスや、その背後にいる人たちのことを「分かっているのか(知っているかではなく)」という点が大事になるわけで、資格の有無は全く問題にならないように思います。

 

2【想像力=表現力】

次に、具体的な想像力です。これは一方に偏った視点ではありません。ものごとには必ず異なる立場があるということを踏まえた上での表現力です。世の中には色々な立場、主義主張の人がいますよね。

たとえば、会社での自分の立ち位置に固執して、不必要に尊大に振る舞ってしまい、周りに気をつかわせてしまう人。

逆に、あまり、そういうことには興味がなくて、自分が落ち着ける、楽しめる環境を求めた結果、周りも、自分も、なんとなく安心できる環境を作っていける人。

そういう異なるタイプの人が世の中にはいるということを想像できることって大事だと思います。

それは、表現力、すなわち、伝わりやすさ(納得感)につながるためです。

たとえば、Aさんにはこういう風にメールしてみよう、Bさんにはこういう風に書き置きしておこう、Cさんには少しきつめに伝えてみようかなという発想自体、相手の立場やレベルに配慮した想像力、すなわち表現力に他なりませんよね。

やる側としては色々考えることがあるので疲れますが、それで相手が納得してくれるのであれば、やり方としてはスマートです。

要は、どれだけ心を砕いて、その人とのコミュニケーションを取ったのかということでしょうか。そして、これも、資格の有無とは全く関係のない事柄でした笑

 

果たして両者に有意な違いが見いだせるのか、、、自身不安になるところです。

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以上、自分なりに、法務における資格の有無みたいなものを考えてみたのですが、

仕事の本質の部分では全く変わらないのではないかという気がしてきました。

なので、「3【仕事力=総合力】」については、次回また改めて書きたいと思います。なぜなら、自分自身悩んでいる部分ですので。

そして、記事としても、全く面白みに欠ける方向になるのではないかとw

もっと資格の違いを強調して、バズらせる工夫が要るのかもしれませんが、

自分がそう思うんだから仕方ないですよねww

ゴーンショック

表題の件、当初、金商法違反!なんて出るものですから、え?インサイダー!?何でそんなケチなまねを?と思いましたが、被疑事実は、役員報酬の過少申告、すなわち有報の虚偽記載ということでした。

立件の本丸はそこではないんじゃないかという意見もあるように、最終的には、特別背任や、業務上横領などの被疑事実に変化していくのではないかと思いますが、いかなる罪名であれ、これだけの金額の過少申告(背任行為?横領?)や社内外に与えた負の影響に鑑みると、有罪とならば実刑は免れないんじゃないかと。まさかの超法規的措置!が発動されて、フランスに帰国!とかがない限り。

 

さて、日本の経営者の役員報酬については、海外に比べて、低い、低い、とずっと言われてきていたように思います。あのゴーンさんですら、10億円弱だ。それに引き換え、アメリカの経営者はもっとすごい!というような記事もけっこう散見されました。なので、50億円の過少申告ということについて、そもそも貰いすきだ!いう議論はあまり当たらないんじゃないかとも思いますし、経営者の報酬についてもっと締め付けを!みたいな論調になるのもいかがなものかと思います。むしろ、個人的には、窮地に陥った日産の建て直しや、三菱自の不祥事の際の鮮やかな立ち回りからの三社連合の組閣などを見ても、個人的にはもっと貰ってもいい人なんじゃないかとも思っていました(結論として貰っていたようですが笑)。

しかし、日本企業の役員報酬の設定の仕方やその額が諸外国に比べて低いということに構造的な問題があったとしても、市場やステイクホルダーを騙してでも犯罪にコミットしてよいという話にはなりません。希代のカリスマ経営者という側面もあれば、一人のズルくて欲深いおっさんだったというのも事実なんだと思います(報道通りの事実があれば)。業が深いですね。ゴーンさんなだけに。

 

そもそも、本件、代取2名が逮捕されており、本当に他の役員は何も知らなかったのか?組織として、責めを負うべき部分はなかったのかということについても、外から見ると怪しいですよね。本当に一部の人間しか知り得ない完全犯罪だったのかもしれませんが。

明らかに、50億円もの過少申告や、その他の使途不明瞭なお金の動きに誰も気づいていなかったということはないわけで、現に、日産社員と検察との間に司法取引が成立したことがそのことを物語っています。

日産のカリスマ救世主である(あった)ゴーンさんに直接物申せる人がどれだけいたのか、ガバナンス改革、社外役員と声高に叫んではみても、所詮月1の役員会にしか来ない外の人達が持っている情報量や社内人脈では、問題の端緒を掴むことすらできなかったのではないかと思います。もっとも、内部通報を受けてから不正が発覚し、そこからの調査により自浄能力が働いたというのは褒められるべき部分だと思いますし、社外役員の方の力も大きかったのではないかと推察します。その意味では、トップの不正に対し、内部通報がきちんと機能し、適切な対応をしたケースと後日評価される事件なのかもしれないですね。

内部通報を受けて後、どのようなレイヤーで、どのような体制でもって、どのようなスコープで社内調査を遂行したのか、その場合の社外の弁護士との協働や、司法取引というオプションをどの時点から検討したのかという部分は、会社の中にいる人間としては、気になるポイントです。

このブログについて

日本でもだんだんと人数が増えているインハウスロイヤー(企業内弁護士)の日々の仕事、法律ネタ、日々の勉強、若手インハウスロイヤーのキャリア、今後の弁護士業界のことなどについて情報発信したいと思い、ブログを始めることにしました。60期代後半(インハウス5年目)の若輩者ではありますが、思うままに記します。