若手インハウスのひとりごと

若手企業内弁護士の日々の仕事、勉強、法律のこと、今後のキャリアや業界のことを思うままに記すブログです。

ゴーンショック

表題の件、当初、金商法違反!なんて出るものですから、え?インサイダー!?何でそんなケチなまねを?と思いましたが、被疑事実は、役員報酬の過少申告、すなわち有報の虚偽記載ということでした。

立件の本丸はそこではないんじゃないかという意見もあるように、最終的には、特別背任や、業務上横領などの被疑事実に変化していくのではないかと思いますが、いかなる罪名であれ、これだけの金額の過少申告(背任行為?横領?)や社内外に与えた負の影響に鑑みると、有罪とならば実刑は免れないんじゃないかと。まさかの超法規的措置!が発動されて、フランスに帰国!とかがない限り。

 

さて、日本の経営者の役員報酬については、海外に比べて、低い、低い、とずっと言われてきていたように思います。あのゴーンさんですら、10億円弱だ。それに引き換え、アメリカの経営者はもっとすごい!というような記事もけっこう散見されました。なので、50億円の過少申告ということについて、そもそも貰いすきだ!いう議論はあまり当たらないんじゃないかとも思いますし、経営者の報酬についてもっと締め付けを!みたいな論調になるのもいかがなものかと思います。むしろ、個人的には、窮地に陥った日産の建て直しや、三菱自の不祥事の際の鮮やかな立ち回りからの三社連合の組閣などを見ても、個人的にはもっと貰ってもいい人なんじゃないかとも思っていました(結論として貰っていたようですが笑)。

しかし、日本企業の役員報酬の設定の仕方やその額が諸外国に比べて低いということに構造的な問題があったとしても、市場やステイクホルダーを騙してでも犯罪にコミットしてよいという話にはなりません。希代のカリスマ経営者という側面もあれば、一人のズルくて欲深いおっさんだったというのも事実なんだと思います(報道通りの事実があれば)。業が深いですね。ゴーンさんなだけに。

 

そもそも、本件、代取2名が逮捕されており、本当に他の役員は何も知らなかったのか?組織として、責めを負うべき部分はなかったのかということについても、外から見ると怪しいですよね。本当に一部の人間しか知り得ない完全犯罪だったのかもしれませんが。

明らかに、50億円もの過少申告や、その他の使途不明瞭なお金の動きに誰も気づいていなかったということはないわけで、現に、日産社員と検察との間に司法取引が成立したことがそのことを物語っています。

日産のカリスマ救世主である(あった)ゴーンさんに直接物申せる人がどれだけいたのか、ガバナンス改革、社外役員と声高に叫んではみても、所詮月1の役員会にしか来ない外の人達が持っている情報量や社内人脈では、問題の端緒を掴むことすらできなかったのではないかと思います。もっとも、内部通報を受けてから不正が発覚し、そこからの調査により自浄能力が働いたというのは褒められるべき部分だと思いますし、社外役員の方の力も大きかったのではないかと推察します。その意味では、トップの不正に対し、内部通報がきちんと機能し、適切な対応をしたケースと後日評価される事件なのかもしれないですね。

内部通報を受けて後、どのようなレイヤーで、どのような体制でもって、どのようなスコープで社内調査を遂行したのか、その場合の社外の弁護士との協働や、司法取引というオプションをどの時点から検討したのかという部分は、会社の中にいる人間としては、気になるポイントです。

このブログについて

日本でもだんだんと人数が増えているインハウスロイヤー(企業内弁護士)の日々の仕事、法律ネタ、日々の勉強、若手インハウスロイヤーのキャリア、今後の弁護士業界のことなどについて情報発信したいと思い、ブログを始めることにしました。60期代後半(インハウス5年目)の若輩者ではありますが、思うままに記します。